ロシアの全面戦争とは? 田中宇さんのブログより

2022/06/25


 2022年6月24日  田中 宇(さかい)さん のブログより 抜粋


「なぜロシアは2月24日の開戦時に、異様に大規模な全面戦争をいきなり始めたのか」という疑問、

ロシアが今のウクライナ戦争で達成したいことは、ウクライナの極右政府や軍が東部2州(ドンバス)のロシア系住民をいじめたり殺したりしていたのをやめさせることだ。

中略

だが、2月24日に実際に露軍がウクライナに侵攻した時、露軍は電撃的にウクライナ全土の制空権を奪い取り、ドンバスだけでなくキエフに北部などにも地上軍を入れた。露政府が発表したウクライナ侵攻(特殊作戦)の目的は、ドンバス露系住民の保護だけでなく、それよりはるかに広範な、ウクライナ全体の非武装中立化と極右勢力排除(非ナチ化)だった。私は、ロシアが一足飛びにウクライナ全土を戦争の対象にしたので驚いた。

中略

もし2月24日に露軍がウクライナ全土でなく東部ドンバスだけを侵攻対象にして、ドンバスの露系住民がそれまでの8年間に米国傘下のウクライナ極右政権からいかにひどいことをされてきたかを世界に向けて強調して説明していたら、ロシアは今のように米国側から猛烈に敵視されなかったかもしれない(単に米国側に無視されて極悪のレッテルを貼られて終わっていたかもしないが)。これまでドンバスの露系住民をひどい目に合わせてきた「犯人・黒幕」は米国だ。ロシアは被害者の側だった。米国が2014年にウクライナに諜報的に介入して親露政権を転覆して米傀儡の極右の反露政権を就任させた後、極右政府はドンバスなどの露系住民に前政権が与えていた自治を剥奪し、弾圧してドンバスで内戦を勃発させ、8年間で14000人の露系を殺した。米国はこの8年間、ウクライナを傀儡化してロシアの在外邦人である露系住民を殺し続ける「ロシアを怒らせる策略」を続けてきた。

ウクライナとロシアは別々の国だから、何の前提もなければロシアがウクライナに侵攻したら「戦争犯罪」になる。だが歴史的に見ると、ウクライナとロシアは1990年のソ連崩壊まで、ソ連という1つの国の中にあった。ソ連崩壊後も、ウクライナを含む旧ソ連各国にそれぞれ一定数のロシア人(露系住民)が住んでいる。露軍の重要なセバストポリ軍港があるクリミアが、ウクライナに属していたりする(ウクライナ系の権力者だったフルシチョフが1954年にクリミアの帰属を変更した)。ソ連崩壊後、ウクライナとロシアが別々の国であるには、ウクライナがロシア敵視にならず、国内の露系住民を大事にして、露軍がセバストポリ港を使うことを承認し続けることが必要だった。米国は、これを崩す目的で2014年にウクライナの政権転覆を扇動・実現して露敵視の極右政権を就かせ、露系住民の人権を剥奪し、セバストポリ港を露軍に使わせないと新政権に言わせた。米国はウクライナを傀儡化してロシアに宣戦布告したも同様だった。ロシアは正当防衛としてクリミアを分離独立させてロシアに併合した。

歴史的な経緯をふまえると、ウクライナとロシアが別々の国であることは「事実の半分」でしかない。残りの半分は、この8年間のように米国がウクライナを傀儡化してロシア敵視をやらせた場合、ロシアが軍事的な報復をやることが「侵略戦争・人道犯罪」」でなく「正当防衛」である、ということだ。

しかし同時にいえるのは、ロシアが2月24日の開戦で東部ドンバスだけでなくウクライナ全土を軍事行動の対象にして、露系住民の保護だけでなくウクライナの非武装中立化や非ナチ化を軍事行動の目的にしてしまったため、上で述べた歴史的経緯を踏まえた正当防衛という見方が吹き飛んでしまい、ロシアが突然にウクライナを侵攻する戦争犯罪をおかした、という話だけが世界に流布することになった。「極悪なロシアを絶対に許すな」「プーチンを戦争犯罪者として裁かねばならない」「プーチン政権が潰れるまでロシアを徹底的に経済制裁せねばならない」という話になっている。

「悪」「極悪」のレッテルを貼られ、米国側から猛烈に経済制裁されたものの、経済制裁はロシアでなく米国側に石油ガス資源食料類の高騰と物不足・経済破綻をもたらす半面、ロシアはインド中国など非米諸国との結束を強めてむしろ経済的に強くなっている。軍事的にも、米国側がいくらウクライナを支援してもロシアの優勢はゆるがず、すでに露軍はドンバスやクリミア周辺を安定的に占領し、軍事作戦(侵攻)を成功させている。米国側が「極悪なプーチンのロシアを許すな」と叫んで厳しい対露経済制裁を続けるほど、米国側は経済的に自滅し、ロシアは非米諸国と結束して覇権の多極化を進めて成功していく。ウクライナでは露軍が支配地域をじわじわと広げて勝っていく。

プーチンがドンバスだけでなくウクライナ全土を対象にする派手な侵攻劇を展開し、米国側が激怒してロシアに極悪のレッテルを貼って極度に経済制裁するように仕向けたことが、ロシアの優勢と米国側の自滅につながっている。プーチンは、あえて派手な侵攻劇を展開して極悪者になることで、経済と軍事の両面でロシアを勝たせ、米国側を自滅させている。プーチンはもしかして、常識的には大失敗である派手な侵攻劇を意図的に展開し、米国側がロシアに極悪のレッテルを貼って自滅的な対露制裁をやるように仕向ける「偽悪戦略」を事前に考えたうえで実行し、成功しているのでないか。

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プーチンは先日のサンクトペテルブルクの経済フォーラムで、非米諸大国のゆるやかな同盟体であるBRICSのうち、最近やる気がない南アフリカをのぞいた4か国(露中印伯)と、インドネシア・イラン・トルコ・メキシコという大きめの4か国を合わせた8か国を、新たなG8と名づけることを提唱した。日本など米国側の「旧G8」がロシアを敵視して追い出してG7に戻ったので、それへの復讐としてロシアが非米諸国を束ねて新G8を作った。米国側の旧G8はインフレと経済破綻で急速に衰退して時代遅れの存在になっており、

中略

こんな風にロシアはウクライナ開戦後、軍事的にも経済的にも予定通りに勝利・成功している。開戦時に派手な侵攻劇を展開する「大失敗」をやったことが、今後の経済面の「大成功」につながっている。派手な侵攻劇は「失敗」でなく意図的な「偽悪戦略」だったと考えられる。

英米は、戦争をめぐる善悪関係を絶対的なものにしているので、米国側(英米傀儡)の人々は勧善懲悪の善悪観念に縛られ、プーチンのロシアを永久に極悪の戦犯とみなし、米国側を自滅させロシアを強化する極度の対露経済制裁をやめられない。欧州などはエネルギー資源不足になって窮乏しているが、対露制裁をやめるのでなく、制裁を続けるふりをして抜け穴を作って必要な資源類をこっそりロシアから輸入し続けている。米国側のネオコンや、その傀儡であるゼレンスキーとかが「もっとちゃんとロシアを制裁しなきゃダメだ」とネジを巻き直し続け、米国側の経済自滅を加速している。最近はリトアニアが、EUの対露制裁の一環として、ロシア本土から飛び地の領土であるカリーニングラードへの物資の輸送を止め始めており、それへの報復としてロシアが欧州へのガスなどの輸出をさらに減らし始めている。米国側、とくに欧州の経済自滅がこれからひどくなる。

このように大成功している偽悪作戦は、プーチンや側近群らロシア人の発案なのか??。私の勘では、そうでなく、米国の諜報界のネオコンら隠れ多極派の発案だと思われる。

ロシアがウクライナで見かけだけ派手な侵攻劇(実際の市民の死者は戦争として僅少)をやって戦争犯罪のレッテルを貼ってもらい、それをテコに米国側が自滅的な対露制裁をやって覇権を失って多極化するというシナリオはどうだろう、良いじゃん、やろうぜ、とネオコンとプーチンが意気投合し、実行してみたら大成功して今の事態になっているのでないか。

今後の時代、ロシアや中国への敵視は、資源を入手できなくする馬鹿者の態度だ。日本では、右翼が対米従属の一環として昔からソ連ロシア敵視であり、彼らは米覇権崩壊とともに存在そのものが消えていきつつある(代わりにちゃんとした右派・保守派が出てくればいいのに、右の人々は米覇権衰退にも気づかずダメなままだ)。他方、左翼政党はかつて中露に寛容だったのに、最近になって中露敵視に転向しており、こちらも米英ネオコンのうっかり傀儡の馬鹿者になっている。諜報界肝いりの国際共産主義運動から発生したくせに、ちゃんと世界を見ていない。

新聞とかテレビとかが言っていることは最近まったく頓珍漢、というか最悪だ。最大の戦争犯罪者とは実のところ、戦争反対とか地球温暖化対策とかコロナワクチンを全員にとか、インフレ対策として利上げすべきだとか言っている、永久に軽信的な人々だと思う。

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中年主婦です。パートを辞めてしまい現在ひきこもり中。誰にも聞いてもらえないので、日々考えていることを記します。陰謀論研究家。

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